下線部①「あなた」が指すものを答えなさい

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このクッキーもおいしいけど、おばあちゃんが焼いてくれたクッキーが食べたいね。

−−−

まるでそれが初めてかのように、繰り返し語る。
大事なものが浮かび上がって、あなたの輪郭が見える。

ときには、そっとしまっておいたらいつのまにか忘れてしまって、たまに誰かにライトを当ててもらってそこにしまっていたのだと思い出す、あるいは消えそうなところに火を分けてもらって、またほんのりと灯りをともす。

もしもそれが、ただしまっておいたらただならぬ匂いがして、口を開けて空気を入れ替えねばならない、毒を持っているけれどそれをつかんでいないと流されてしまうかのようなものならば、代わりにもっと心地よくてきれいなものをその場所にしまえるのだと、知ったかぶりで言ってみたくなるのは愚かな証拠。
そこはとてもデリケートな場所だから、あなたにとっての誰か、何かがやってくるのを待ちながら、あなたのセリフに頷いてお茶を飲む。

まるでそれが初めてかのように、繰り返し語る。
あなたの大事なものが、あなたを不安にすることがある。

宝箱の中にとても大事なものをしまっているのだけれど、それをじっくり眺めるために、誰かに蓋を開けていてほしい。
もしかしたら、蓋が重くて一人では開けられないのかもしれない。
あるいは、鍵を開けたまま、誰かが蓋を開けてくれるのを待っている。
誰かが認めてくれることで、その重みを確認する。

まるでそれが儀式であるかのように、丁重に慎重に執り行う。
それを行ってもいいものか、しばらく様子を見る。

大丈夫そうだと思って、蓋を開けてそっと見せてくれる。
もしかしたら誰にでも見せてくれているのかもしれないけれど、それはそれでそれがあなたの手がかり。
それでも深呼吸して、えいやと見せてくれたのだとしたら、中身よりもまずそのことに対して目が合って、何でもない風で、第一声にふさわしい言葉をさがす。頷き返したのが見えるように願う。

そしてほんとうはただ、きれいなものを見て、あなたにも見せたいと思った。
あなたにも見てほしい、あなたと一緒に見てみたい。
きれいだねってわらってくれたら、その瞬間が何よりきれいで、何より大切なものになることを知っている、あるいはそうと定義している。

他には何もいらないなんて言ったらウソツキって言われそうだし、まあ実情はそうじゃないし、でも真顔でそう言って1秒くらいはその表情をキープできるし、そういうのが自分の中にもあったと発見したときコロンブスの気持ちがわかったと言ったら案外真面目な顔でそうなんだよねえと言ってくれる彼や彼女をあなただってどこかで探しているのではあるまいか。

そしてもうひとつ、そっとしまっていて、誰に見せる必要もない、ただあなた自身だけが知っていればいいもの、あるいはあなただけにしか見えないもの。
それを見ているんだなとたまに気付くことがある。見せてなんて言えないし、言わないし、もしも見るならば、それを見つめるその横顔でいい。

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