ショートコント・幽霊

「ああカノジョがほしい。こんなにモテないなんて、僕ってそんなダメなヤツなのかな」
「カノジョなんてお金かかるだけじゃない。そんなことよりこのクッキーおいしいよ」
「…だってトムもジョンも、マイケルだって、みんなカノジョがいるよ(…お金がかかるってなんでわかるんだ。っていうかほんとに食べてるのかな)」
「ふうん。『カノジョがいないボク』にこだわるんだねえ。君たち人間はもうからだによって十分縛られているのに、どこまでも縛られたがるんだね。」
「そんなこと言って、君こそからだがないならどこへでも行けそうなのにこの部屋にすみついて、どこにも行かないじゃないか」
「だって地縛霊だもの」
「…そっか、今はそんな姿だけどきっと人間だったんだね」

部屋の整理をしていて、学生時代に書いた日記を何冊か見つけました。青春ってはずかしいものなんだなあと楽しい気分になって、昔の自分に感謝する気持ちと、時々でいつも、夢中になったりこだわっていた物事があったのだなと気が付いたら、なぜか幽霊が浮かびました。

からだは重力に縛られているから、飛べないけどひとところに留まって、そこから歩いたり走ったりできる。
こころはからだあってこそで、からだの具合が悪いと気持ちも落ち込むし、それでもう十分制約を受けている気がするけれど、からだ以外に、何か留まるもの、捉えてくれる何かが必要なのかもしれないと思います。

出世やお金だったり、恋人や友人だったり、お酒や食べ物だったり、本を読んだりアニメを観たり、それらをつくることだったり、人によっては自分を追いつめることや傷付けるような何かにとらわれて、それ以外に目の向くことが現れずに、あるいは気付けずに、苦しくなったりするのだろうと思います。

自分の知らない千差万別にこころ奪われている人がきっとものすごくたくさんいて、その理由や、なぜ夢中になるのかは、理解できないこともあるのかもしれない気がします。もしかしたら本人にもわからなくて、後からわかるのかもしれないと思います。

たまたまその対象に出逢ったり、見つけたり、気が付いて、人生が大きく変わることもあって、人生とまでいかなくとも、自分を心地よくしてくれる何か、心惹かれる何かがあることはありがたいと思います。
何にも執着しない状態を自由と呼ぶのかはわからないけれど、本当の自由はきっと私には手に負えなくて、そうなったらどこへも行けない、何もできない気がしまします。

まだまだ知らない何かに夢中になることもあるのかもしれないと思うと、少々恐ろしいような楽しみなような気がします。
地味だけれど好ましく思うもの、幸せな気持ちにしてくれるもの、あるいはそれを大事に思う自分にこだわっているだけなのかもしれないですが、それを守っていきたいと思う気持ち、続いてほしい気持ちがあって、でもそれをずっとは続けられない、続いてくれないかもしれないことを思うと怖くなって、何かを得る、ある状態に達すると、失うことやそこから動くことへ恐怖を抱くのだなと思います。

ひっくるめて受け入れられるようになるには到底修業が足りませんが、くたりとしたこころ持ちで、心地よくしてくれる何か、夢中にさせてくれる何かを享受できるときには、その一瞬一瞬を味わいたいと思いました。

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